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今秋リリースのポデーレ・イル・パラッツィーノ

2022年9月リリースの、3種類のイル・パラッツィーノについてですが……
「昨年までと違う」と私が言っては、おつきあいいただいている方々に申し訳ないのですが、「とびっきり美味しい、何が変わったのだろうか」と、嬉しい疑問を繰りかえしています。

あまりの驚きに「何か変えたことはあるの?」と問い合わせても、「美味しくて、それは良かった。何も変えていないよ。ヴィンテッジもいいしね」と、息子のエドアルド。次回の出張で、しかとこの眼で在りようとその理由を確かめなくては。しっとりとした質感、鼻腔を抜けていくスミレの花のような香り、上質ワインの印であるストラクチャーと長い余韻、何かが違うと思わずにはいられません。

ポデーレ・イル・パラッツィーノとのお取引は、旧八田商店でイタリアワインを取り組むことになった1995年から、27年もの間お取引が続いています。長いビジネスの中で、イル・パラッツィーノほどインポーターとして混乱を感じた造り手はないと言ってよいかもしれません。正直に言えば、「極上のワイン」と「並みのでき」の間を、なぜか往ったり来たりしていたのです。
イル・パラッツィーノは、シエナの銀行に勤めるアレッサンドロ・ズデルチのワイン好きが高じて始まったワイナリーです。ガイオーレ・イン・キャンティの南、標高400mの、古くから地元でガイオーレの “ザ・クリュ” 別格地とみなされている一角に畑は広がっています。
そして、1990年代の『イ・ヴィニ・ディ・ヴェロネッリ』、バートン・アンダーソンの名著『ヴィーノ』、ローズマリー・ジョージ著『キャンティとトスカーナのワイン』(いずれも未訳)といった重要なワインブックで、別格の高い評価を得ていました。イタリアワインを夢中で追いかけ始めたころ、トスカーナの「名品」を次々味わいながら、イル・パラッツィーノの、わけてもグロッソ・サネーゼにある、(スーパータスカンらしからぬ)温和な優しさと芳醇で見事なブーケをまとった、ほかのキャンティ・クラッシコとは明らかに異なる味わいに、すっかり魅了されていました。2000年ごろだったと思いますが、六本木のラ・ゴーラで、「澤口知之シェフのお料理とトスカーナのワインを楽しむ会」を開きました。そうそうたるワインの中で、とびぬけて深い印象を与えてくれたのは、イル・パラッツィーノのグロッソ・サネーゼ1985でした。

若き日のアレッサンドロとマルク・デ・グラツィア

しかし時が過ぎ、2000年になってまもなく、「別格の味わい」は姿を消してしまいました。じつは、同ワイナリーで長く醸造を担ってきた方(左写真:25年以上前のことで、お名前も忘れてしまった)が亡くなったためと、後から聞き知って、判然とした次第です。

今なおレストランの方々とお話しすると、「1990年代のグロッソ・サネーゼは、素晴らしかったですね」という過去の思い出の中のお話しとなってしまうのです。が、どうやら何か復活の兆しがみえてきたようです。幸運にも世界的な再評価が出る前に追加発注ができました。トスカーナの特別な味わいをじっくりお楽しみください。

◆トスカーナ ロッソ・デル・パラッツィーノ 2019

¥2,860(税込)

 

◆キアンティ・クラッシコ アルジェニーナ グラン・セレツィオーネ 2018

¥4,400(税込)